スタジオに、法律のプロ「アディーレ法律事務所」 正木 裕美弁護士をお招きして、身近に起きる様々なトラブルについてお聞きしました。
ケース1「それぞれの遺言書」
Q.兄と妹に残された遺言。有効なのはどちらでしょうか?
[1]ビデオテープの遺言 [2]手書きの遺言
正解は・・・ 手書きの遺言
「ビデオテープ」の遺言ですが、例え父親本人が肉声でしゃべっていたとしても遺言として無効です。
法律上は、ビデオや音声テープのような記録媒体での遺言は、加工される恐れがあるため全て無効とされています。
本人が手書きした遺言を「自筆証書遺言」と言いますが、作成時の注意点も色々あります。
まず遺言者が、遺言の全文、作成した日付及び氏名を自分で書いて、印を押さなければいけません。
代筆で作成したもの、年月日の記載がないもの、日付が作成日でないもの、署名押印がないもの、自筆でなくパソコンで作成したもの、は全て無効です。
もし有効な遺言が複数見つかったときは、日付に注目。作成日付が一番新しいものが有効になります。
■手書き以外の遺言の方法は?
いくつかありますが、例えば「公正証書遺言」があります。
これは公証人役場へ遺言者が行って、遺言を伝え、公証人が聞き取った内容で公正証書を作り、半永久的に役場で保管してもらう方法です。
多少、費用はかかりますが、自筆より記入ミスも少なく、争いになりにくいので、安心で確実な遺言方法かと思います。
またいずれの遺言も、弁護士による文面チェックなどで未然のトラブルを防ぐことも可能なので、ぜひ一度ご相談ください。
ケース2「加工写真でオーディション」
Q.加工写真でオーディションの書類選考に合格。この女性は詐欺罪になるのでしょうか?
正解は・・・ 詐欺罪にならない
詐欺罪の成立には、「財物を騙し取ることを目的として人を欺く行為」がなければいけません。
今回のケースでは、書類選考の段階で賞品などは無いようですし、詐欺罪は成立しないといえます。
■書類選考で賞品があったらどうなる?
加工の程度や応募要項などにもよりそうですが、賞品を騙し取る目的があったとすると、理論的には詐欺罪が成立する可能性はありますね。
社会通念上妥当な範囲で写真を加工するということ自体は、一般的によくされていますよね。今回のようなケースで詐欺罪として有罪の判決が出るのはあまり考えられないと思います。ただオーディションの規約等で写真の加工が禁止されている場合もあると思いますので、ルールを守っての参加を心掛けましょう。
ケース3「両親に貸したお金」
Q.両親からお金を返してもらえない息子は、両親に対して裁判を起こす事ができるのでしょうか?
正解は・・・ 裁判を起こせる
そもそも親子間で裁判してはいけないという法律はないので、裁判自体は起こせます。
今回のポイントは「渡したお金は借金なのか?」なんですね。
まず、返済をする合意でお金渡したときは、金銭消費貸借契約が成立します。聞きなれないかもしれないですが、要は借金の契約です。
問題のお金がこの「金銭消費貸借契約に基づいて渡したお金」なら、借金なので返してもらえます。
■書面が無くても契約になる?
この契約は口約束で成立します。今回は親も「貸して」と言っており、返す約束でお金を渡していました。なので、金銭消費貸借契約が成立していて、「返して」と請求できそうです。もし両親に対して裁判を起こせば、お金を返せという判決が出て、両親の財産差押えや強制執行ができる場合もあるでしょう。
■裁判を起こして、認められない場合もある?
ありえます。例えば親子間には扶養義務といって、法律上必要に応じ生活費を援助すべき義務があります。そのため、両親にお金を渡していた理由が扶養義務の履行、要するに生活費を渡していた趣旨と判断されてしまうと、借金じゃない以上、お金を返せという請求は認められないですね。
今回は「生活費には困っていない両親が散財のために借りていた」ようですが、他にも、返す約束がない贈与(プレゼント)とされることもあるかもしれません。
親との関係次第でもありますが、基本的には裁判をオススメしないこともあります。
裁判をせず、これまでの恩返しだと思って、広い心で受け止めるとか、財産分与で清算するとき、他の相続人よりも有利に相続できるように遺言をしてもらうのも一つの手ですね。
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